事務の仕事には、毎月おなじことを繰り返す作業があります。私の場合、Excelで行っている勤務記録の集計や給与ソフトへの入力準備がそれでした。以前は4日から5日ほどかかっていたこの作業が、いまは早ければ2日、かかっても3日で終わるようになりました。プログラミングはできません。ただ、AIに相談しながら、少しずつ業務を改善してきた結果です。
はじめにお断りしておくと、これは私個人のやり方で、どんな職場にも当てはまるものではありません。それでも、Excelで勤務集計や給与計算の準備をしている方、事務作業を少しでも効率化したいと考えている方の参考になればと思って書いておきます。
手作業をExcelに置き換えた
最初にやったのは、手で計算していたものをExcelに置き換えることでした。たとえば駐車場代です。勤務した日数によって、3段階くらいに料金が変わる仕組みだったので、毎月それを数えて、該当する金額を確認して、という作業をしていました。単純なようでいて、日数を数え間違えれば金額も間違う。地味に神経を使う作業です。
これを、IF関数を重ねた計算用のタブを別に作って、そこで金額が出るようにしました。そして、実際に使う一覧表のほうには、XLOOKUP関数でその金額を引っ張ってくる。計算する場所と、一覧にする場所を分けたわけです。
分けたのには理由があります。
こういう計算は、駐車場代に限らずいくつもあります。それぞれをタブごとに分けて、計算の根拠が見えるようにしておくと、自分で見返すときにも分かりやすい。あとから「この金額はどう出したんだったか」と確認したくなることは、けっこうあります。ひとつのタブに押し込んでしまうと、そういうときに追いにくくなります。私以外の人が担当することになったときにも、同じことが言えます。
そして一覧表のほうは、給与ソフトへの入力用です。
使っているソフトにはデータを取り込む機能もあるのですが、対応しているのは一部だけで、どうしても手で入力しなければならない項目が残ります。ここは、こちらの都合では変えられません。
だったら、せめて入力しやすい形にしておこう。そう考えて、必要な数字だけをXLOOKUPで一か所に集めた一覧表を作りました。計算結果があちこちのタブに散らばっていると、入力のたびに探すことになります。順番も、ソフトの入力画面に合わせてあります。
自動化できないところは、諦めて、その代わり少しでも楽にする。そういう部分も、実際にはたくさんあります。
なお、XLOOKUPは比較的新しい関数なので、職場のExcelのバージョンによっては使えないことがあります。その場合はVLOOKUPでも同じことができます。
勤務時間の集計も、同じようにExcelに任せました。勤務形態がいくつかに分かれているので、それぞれの回数を入力すれば時間が出るようにしておく。時給で働いている方については、日ごとの勤務時間をそのまま入力する形にしました。ここまでは、関数だけでできる範囲です。
AIに入力を任せてみた
問題は、その入力そのものに時間がかかることでした。手元にある勤務の記録を見ながら、一人ずつ、数字をExcelに打ち込んでいく。この作業だけで、かなりの時間を使っていました。
そこで、AIに頼んでみることにしました。
記録の資料を渡せば、必要な数字を拾ってExcelに入力してもらう。時給制の方については、日々の勤務時間も入れてもらう。最初はうまくいきませんでしたが、出てきたものを見て「ここが違う」「この場合はこうしてほしい」と伝えながら調整していくうちに、実用に耐えるものになりました。
ちなみに、Excelへの入力は任せられるようになりましたが、給与ソフトへの入力は相変わらず手作業です。
ただし、ここには限界もあります。手書きの資料は、AIでも読み間違えることがあるのです。
数字の書き方には癖がありますし、書く人によって濃さも違う。印字された資料に比べれば、読み取りの精度はどうしても落ちます。だから、入力してもらった結果をそのまま信じるわけにはいきません。
一番効果があったのは確認作業
いちばん効果が大きかったのは、実は集計そのものではなく、確認の作業でした。
勤務の記録と、集計した結果を突き合わせて、食い違いがないかを確かめる。この作業は、人間がやると必ず見落としが出ます。しかも、月末の忙しい時期に、集中力を要する作業です。数十人分を目で追っていると、途中から何を見ているのか分からなくなってくる。
これを、AIに頼んで、二つの資料を比較して、相違があるところに色を付けてもらうようにしました。色が付いた箇所だけを確認すればいいので、見落としが減り、時間も大幅に短くなりました。
この突き合わせは、読み取りの誤りを見つけるためにも役立っています。別の資料と照らし合わせて、数字が合わなければ、どちらかが間違っている。そこだけ人間が確認すればいい。AIに任せきりにせず、必ず別の資料と突き合わせる。この手順があるから、安心して任せられている面があります。
自動化というと、作業そのものを減らすことだと思われがちですが、私の場合、人間には向いていないチェック作業を機械に任せたことのほうが、効果がありました。人は同じ作業を繰り返すと注意力が落ちますが、機械はそうなりません。得意なことを分担してもらった、という感覚です。
一度に完成させようとしない
うまくいかせるコツがあるとすれば、一度に完成させようとしないことだと思います。
私も、最初から思い通りのものができたわけではありません。相談しては直し、また相談しては直しの繰り返しでした。正直なところ、どういう指示を出したのか、細かいところはもう覚えていません。それくらい、少しずつ積み上げた結果です。
業務の説明も、事前にきちんと用意する必要はありませんでした。出てきたものを見て、ここが違う、この場合はこうしてほしい、と指摘していくうちに、だんだん形になっていきます。
何が正しくて何が違うのかを判断できるのは、実務をやっている自分だけです。逆に言えば、それさえできれば、説明が上手でなくても形にはなります。
ちなみに、なんでも自動化したわけではありません。年に一度あるかないか、という作業については、手順書を書いて残すだけにしました。頻度の低いものを仕組みにしても、作る手間のほうが大きくなってしまいます。次にやるときに迷わなければ十分なので、そういうものは文章で残しておく。それも立派な効率化だと思っています。
AIは改善方法も一緒に考えてくれる
もうひとつ、始めてみて分かったことがあります。
私は、「これを作ってほしい」と完成形を決めて相談したわけではありません。むしろ、「この仕事をもっと効率よくする方法はある?」とAIに相談するところから始まることのほうが多くありました。
すると、自分では思いつかなかった方法を提案してくれることがあります。試してみて、「ここは違う」「このほうが使いやすい」と伝えながら、少しずつ実際の業務に合う形にしていきました。
AIは、言われたことだけをやる道具ではありません。一緒に改善方法を考える相手にもなってくれます。
4日から5日かかっていた作業が、2日から3日になりました。半分になったわけではありませんし、劇的な変化とも言えないかもしれません。それでも、毎月のことです。年間にすれば、それなりの日数になります。
なにより、確認作業の負担が減ったことが大きい。見落としがないか気を張り続ける、あの疲れ方が減りました。数字にはあらわれませんが、これがいちばんありがたいことかもしれません。
コードが書けなくても、今やっている仕事を説明して、「もっと楽にできる方法はないですか」と聞いてみる。それだけでも、仕事のやり方は少しずつ変わっていきます。
私自身、その積み重ねで、毎月の事務仕事を減らすことができました。