お金の不安というのは、たいてい「いくら必要なのか分からない」ところから来ているように思います。

老後資金はいくら必要なのか。何歳まで働けばいいのか。本当に今の貯蓄で足りるのか。

考え始めると不安になりますが、実際に数字にしている人は意外と少ないのではないでしょうか。

だったら、分かる範囲で計算してみればいい。

そう考えて、私はExcelで将来の家計をシミュレーションしています。

はじめにお断りしておくと、これは私個人のやり方です。将来の収入や運用利回りは予想どおりになるとは限りません。あくまで、不安を整理するための一つの方法として紹介します。

なぜExcelで作ったのか

便利なアプリやサービスもありますが、「60歳で退職したら」「配当金が増えたら」「旅行を増やしたら」といった条件を、自分の考えに合わせて自由に変えながら試したかったので、私はExcelを使いました。

Excelなら、自分に必要な項目だけを追加できます。

複雑な関数もほとんど使っていません。

表の作り方

作りはごく単純です。

横に年を並べ、縦に項目を並べるだけです。

私が入れているのは、

  • 家族それぞれの年齢
  • 給与収入
  • 配当金
  • 年金
  • その他収入
  • 年間生活費
  • 特別費
  • 資産残高

といった項目です。

毎年の収入と支出を入力し、その年の資産がどう変化するかを計算できるようにしています。

実際の表は、たとえばこんなイメージです(数字はすべて架空の例です)。

項目 2026年 2027年 2028年
本人の年齢 52 53 54
給与収入 480 480 490
配当金 30 33 36
年金 0 0 0
年間生活費 360 360 360
特別費 30 100 20
資産残高 1,170 1,223 1,369

(単位は万円で、数字はすべてダミーです。私の実際の家計ではありません。この横に年を足していき、退職する年齢や年金の開始時期などの条件を変えながら、資産残高がどう動くかを見ています。)

最初は大まかで十分

最初から細かく作る必要はありません。

私はまず、

  • 生活費はいくらか
  • 何歳まで働くか
  • 年金は何歳から受け取るか
  • 配当金はいくら見込むか

このくらいから始めました。

あとから旅行費や車の買い替え、大きな家電の購入などを追加していけば十分です。

条件を変えてみると、見えてくるもの

Excelで作る一番のメリットは、数字を簡単に変えられることです。

例えば、

  • 60歳で退職した場合
  • 65歳まで働いた場合
  • 年間生活費が30万円増えた場合
  • 配当金が増えた場合
  • 運用利回りを低めに見積もった場合

こうした条件を変えるだけで、将来のお金の動きが見えてきます。

思っていたより余裕があることもありますし、逆に「ここは見直した方がいい」と気付くこともあります。

ところが、実際に何度も試算していると、もう一つ分かったことがありました。

数字は、驚くほど簡単に変わるのです。

昇給率を1%変える。運用利回りを1%変える。

たったそれだけで、20年後、30年後の資産残高は何百万円、時には一千万円以上変わることもあります。

つまり、精密に当てにいっても意味がない、ということです。

前提が少しずれれば、結果は大きくずれる。それがこの手の計算の性質なのだと思います。

だから、順番を決めることにした

数字が当てにならないなら、正確な金額を出そうとするより、「何を、いつやるか」を決めるほうが実用的だと考えるようになりました。

やりたいことには優先順位があります。

そして、その中には、お金よりも時間のほうが大切なものがあります。

体を使う旅行。

遠くへ出かけること。

長時間歩く観光。

そういうものは、お金があっても、年齢を重ねると難しくなるかもしれません。

だから私は、「できなくなることほど、早くやる」と考えるようになりました。

その前提の一つとして、私は70歳以降の生活費を現在の7割程度で試算しています。

体力や気力の衰えから、旅行や外食は今より減っていくと考えているからです。

もちろん、医療費などは増えるかもしれませんし、人によって暮らし方は違います。

それでも私自身は、「元気なうちに経験へお金を使いたい」と考えているので、この前提で試算しています。

家計シミュレーションは、いくら貯まるかを見るための表だと思っていました。

でも、実際には「人生で何を優先するか」を考えるための表になっていました。

正確な予測ではなく、安心するための道具

もちろん、未来は予想どおりにはなりません。

収入も支出も、物価も税金も変わります。

だから、この表は未来を当てるためのものではありません。

私は、「もしこの条件なら大丈夫そう」という目安を持つために作っています。

地図を持たずに歩くより、大まかな地図があるほうが安心できる。

それと同じような感覚です。

不安は、数字にすると少し小さくなる

私も以前は、「老後のお金が足りるのだろうか」と漠然と不安を感じていました。

でも、Excelで試算するようになってからは、「今の条件ならこのくらい」「もし収入が減ったらこうしよう」と考えられるようになりました。

もちろん、将来は誰にも分かりません。

それでも、「分からないから不安」だったものが、「数字を見ながら考えられる不安」に変わっただけでも、気持ちはずいぶん楽になりました。

将来のお金を考えることは、未来を当てることではありません。

安心して今日を過ごすために、未来を少しだけ見えるようにしておくことなのだと、私は思っています。